「ヤリスクロスって本当に評判どおりのクルマなの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。期待して試乗してみたら、意外な弱点が見えたり、思っていたのと違う印象を受けることもあります。
本記事では、Zグレード4WDを実際に試乗したうえで、加速感や静粛性、内外装の質感、さらにはライバル車との比較まで、辛口で徹底的にレビューしました。この記事を読むと、ヤリスクロスの長所と短所がはっきりわかり、どのグレードがおすすめか、どんな人に向いているのかも具体的に理解できます。購入前にぜひ参考にしてください。
はじめに
出典:TOYOTA
ヤリスクロスへの期待と現実
ヤリスクロスは、登場前から「コンパクトSUVの本命」として大きな期待を集めていました。コンパクトなボディに、トヨタらしい高い信頼性や先進装備、そしてSUVらしい力強さを備え、老若男女問わず多くの方が注目したのも納得です。特に「ヤリスをベースにしながらも、より広くて使い勝手が良く、さらに走りも上質になるのではないか」という期待が膨らみました。
しかし、実際に試乗してみると、その期待と現実には少しギャップがありました。確かにボディの質感や安全装備、積載性などは価格以上の価値を感じますが、走行面や静粛性については「もっと良いのでは?」と感じる部分も多々あり、期待が大きかった分、辛口な評価をせざるを得ないポイントもありました。
今回試乗した車両のスペック(Zグレード 4WD 244万円)
今回試乗したのは、ヤリスクロスの中でも最上位に位置する「Z」グレードの4WDモデルです。価格は244万円で、装着されていたのはモデリスタの「ADVANCE ROBUST STYLE」というエアロパーツ付きの仕様。ボディカラーは「ブラックマイカ」で、都会的でキリッとした印象が強い一台でした。内装はブラウン基調で、シートやドアトリムにも落ち着いた色味が使われており、Zグレードならではの装備としてはパワーシートやフルLEDテールランプ、18インチタイヤなども搭載されていました。
ヤリスクロスの基本情報
出典:TOYOTA
グレード・価格一覧(具体的に)
ヤリスクロスのグレードは、ガソリンとハイブリッド、それぞれに複数の選択肢があります。ガソリン車の価格帯は179万円(X Bパッケージ・FF)からスタートし、最上位のZ・4WDが244万円となります。具体的には以下のようになっています。
- 【ガソリン車】
- X Bパッケージ:179万円(FF)/ 202万円(4WD)
- X:189万円(FF)/ 212万円(4WD)
- G:202万円(FF)/ 225万円(4WD)
- Z:221万円(FF)/ 244万円(4WD)
- 【ハイブリッド車】
- HYBRID X:228万円(FF)/ 251万円(4WD)
- HYBRID G:239万円(FF)/ 262万円(4WD)
- HYBRID Z:258万円(FF)/ 281万円(4WD)
価格帯は、ガソリンよりもハイブリッドのほうが30万円前後高めの設定です。装備や走りの質をどこまで求めるかによって、どのグレードを選ぶかが決まってくるでしょう。
エンジン・駆動方式・スペック
エンジンは1.5Lの「ダイナミックフォースエンジン」を搭載し、ガソリン車は3気筒の自然吸気です。ハイブリッドは同じ1.5Lエンジンにモーターを組み合わせ、より低燃費で力強い走りを実現しています。駆動方式はFF(前輪駆動)と4WDが用意され、4WDモデルではリアにダブルウィッシュボーン式サスペンションが採用されるのが大きな特徴です。FFモデルはトーションビーム式となっており、それぞれに乗り味が異なります。また、ボディサイズは全幅がヤリスより70mm広くなり、リアフェンダーが大きく張り出しているため、しっかりとしたSUVらしい存在感があります。
2-3. ライバル車との簡単比較(ロッキー、キックス、2008)
同じクラスで比較されるのは、ダイハツのロッキー、日産のキックス、そしてプジョーの2008です。ロッキーは1Lターボを搭載し、低回転でのトルクが太くて静粛性にも優れています。価格も比較的抑えめで、コストパフォーマンスに優れた選択肢です。
キックスはe-POWER専用車で、電動のスムーズな加速感や乗り心地のバランスが高評価されるモデルです。特にハイブリッド志向の方には魅力的でしょう。
2008は輸入車の中で同じく3気筒エンジンを採用していますが、内外装の質感が高く、運転する楽しさをより強く感じられる一台です。価格帯は少し上がりますが、デザイン性も含めて個性的な選択肢といえます。
こうして比べてみると、ヤリスクロスは「万人向け」の味付けである一方、個性や走りの質ではライバルに一歩譲る面も見受けられます。購入を検討される際は、それぞれの強みをぜひ体感してみてください。
静的質感(内外装・装備)
出典:TOYOTA
外観デザインの特徴と好みが分かれるポイント
ヤリスクロスの外観は、コンパクトSUVの中でもしっかりとした存在感を放ちます。特に、Zグレードに装着されていたモデリスタの「ADVANCE ROBUST STYLE」エアロパーツは、かなり個性的な印象で、好みが分かれるポイントかもしれません。ボディカラーは「ブラックマイカ」でキリッとした印象が強く、サイドビューでは凝縮感のあるフォルムとリアフェンダーの張り出しがSUVらしさを強調しています。一方で、無塗装樹脂が多用されたバンパーやモール部分については、「安っぽい」と感じる方もいらっしゃるでしょう。リアデザインは、一直線につながるように見えるテールランプが特徴的で、ZグレードではフルLED化されており、高級感も演出されています。全体としては、万人受けするデザインではありませんが、攻めた印象を求める方には刺さるデザインです。
Zグレードの内装カラー・質感の評価
内装はZグレード専用のブラウンカラーが採用されており、落ち着いた雰囲気が漂います。ただ、黒を基調とした一般的な内装を好む方には少しクセが強く感じられるかもしれません。質感については、決して高級感があるわけではありませんが、デザインでうまくカバーしている印象です。シートは独特な模様が入ったデザインで、好みが分かれる部分ですが、女性には受けが良さそうです。運転席は6WAYのパワーシートが標準装備され、操作感に慣れれば便利です。全体的に、価格帯を考えれば十分な内容ではありますが、もう一歩の上質さを求めると少し物足りなさも残ります。
ラゲッジ容量やシートアレンジ(390L・4:2:4分割)
ヤリスクロスのラゲッジスペースは、後席を立てた状態で390Lと、このクラスとしては健闘しています。リアシートはGグレード以上で4:2:4の分割可倒式となっており、中央部分だけを倒すとドリンクホルダーが現れるというユニークなギミックも用意されています。このおかげで、スキー板など長尺物を積みながらも4人が座れるなど、使い勝手は高いと感じました。床下収納も比較的深く、FFモデルではさらにフラットで広めに使えるため、荷物が多い方にも安心です。
装備面のポイント(パワーシート、ディスプレイオーディオなど)
装備面も充実しており、特にZグレードではパワーシートやフルLEDテールランプ、オプティトロンメーター、フタ付きバニティミラーなどが標準装備されています。ディスプレイオーディオは少々「後付け感」があるデザインで、好みが分かれるかもしれませんが、標準装備されているのはありがたいポイントです。安全装備では、電子パーキングブレーキやオートブレーキホールドが標準化されており、日常の運転をサポートする機能が充実しています。こうした点は、価格以上の価値があると言えるでしょう。
動的質感(走行性能の辛口評価)
出典:TOYOTA
エンジンフィール:1.5Lガソリンの音と力不足感
搭載される1.5Lガソリンエンジンは、「ダイナミックフォース」という名前が付けられていますが、実際の印象はやや物足りなさが残ります。加速時にはエンジン音が室内に大きく入り、3000回転程度でも思いのほかノイジーです。また、車重がヤリスより200kgほど重くなっているため、同じエンジンでも出足が鈍く感じられ、軽快さはありませんでした。高回転まで引っ張るとさらに音が大きくなり、力強さよりも騒がしさが先に立つ印象です。静かな加速を期待する方にとっては少々辛いかもしれません。
乗り心地:4WDのダブルウィッシュボーン vs FFのトーションビーム
乗り心地については、4WDとFFで印象が大きく異なります。4WDモデルはリアに独立懸架のダブルウィッシュボーンを採用しており、マイルドで柔らかい印象を受けます。一方、FFモデルはトーションビーム式で、よりシャキッとした乗り味が特徴的です。4WDはSUVらしいおおらかさがある反面、揺れが収まりにくい場面があり、「ボヨンボヨン」と余震が残るような感覚でした。逆にFFは姿勢の収束が早く、楽しく感じる方も多いでしょう。乗り心地を重視する方は、ぜひ両方乗り比べるのがおすすめです。
ハンドリング:応答性やパワステの違和感
ハンドリングは全体的に軽めで、街中では取り回しやすいのですが、運転好きな方には少し物足りなく感じるかもしれません。ステアリングの応答がワンテンポ遅く、思い通りに曲がらない感覚があります。また、パワーステアリングのアシストが強く、人間の意図以上に動いてしまうような感触もあり、「車に操られているような印象」を受けました。これは、運転に不慣れな方にとっては楽に感じる味付けかもしれませんが、スポーティさを求める方には違和感が残るでしょう。
静粛性:エンジン音・風切り音・ロードノイズの総評
静粛性は、期待していたほど高くありませんでした。特に、加速時のエンジン音が大きく、低回転からノイズが耳に残ります。さらに、風切り音やロードノイズも意外と目立ち、高速道路では会話の音量を少し上げたくなる場面もありました。コンパクトSUVの中で比べると決して悪い部類ではありませんが、「上質な空間」という印象には届かず、ライバル車に一歩譲る部分です。
燃費や維持コストの考察(簡単に)
燃費については、ガソリン車の4WDでWLTCモードおおよそ15km/L前後とされており、SUVとしては標準的です。ハイブリッドを選べば、燃費は大きく向上し20km/Lを超えるので、年間走行距離が多い方は検討の価値があります。維持コストは国産車らしく全体的に安めで、タイヤも18インチながら特殊なサイズではないため、交換費用も現実的な範囲に収まります。購入後のランニングコストも比較的安心できる一台です。
評価のまとめ
出典:TOYOTA
5つの採点評価(加速感・乗り心地・静粛性・操舵性・楽しさ)
ヤリスクロスを評価する際、特に注目したいのが走りや快適性に関わる5つのポイントです。辛口に見ても、長所と短所がはっきりしています。
評価項目 | 点数(10点満点) | 評価ランク |
---|---|---|
加速感 | 6.0 | C |
乗り心地 | 7.5 | B+ |
静粛性 | 5.5 | D+ |
操舵性 | 7.0 | B |
楽しさ | 6.5 | C+ |
加速感は、車重が重いため3000回転付近でももたつきを感じる場面が多くありました。乗り心地は18インチタイヤながらも柔らかめで、荒れた道でも不快感が少ない印象です。静粛性については、エンジン音が大きく室内に響きやすいため厳しめの評価となります。操舵性は軽くて扱いやすいものの、反応がワンテンポ遅いため走りを楽しむ方には物足りません。楽しさも平均的で、「気軽に乗れるSUV」という印象に留まります。
購入を検討するならおすすめは?(ハイブリッドFF推し)
おすすめするのはハイブリッドのFFモデルです。その理由は、燃費性能と走行フィールのバランスが良く、ガソリンの4WDよりも軽快だからです。実際にガソリンの4WDは、ダブルウィッシュボーンを採用しているものの重さがネックになり、エンジン音も目立ちます。ハイブリッドのFFであれば、価格は上がるものの、静粛性や燃費、軽快感が向上し、より快適なドライブが可能です。価格差以上の価値を感じやすい選択だと断言します。
こんな人にはおすすめできる/できない
ヤリスクロスは、次のような方におすすめです。
一方、以下のような方にはおすすめしにくいです。
購入前に、自身が何を重視するかを明確にしておくと満足度が高まります。
他に検討したいライバル車3選
出典:TOYOTA
ダイハツ ロッキー
ロッキーは、コストパフォーマンスの高さが魅力です。価格はヤリスクロスよりも抑えめで、1Lターボの低回転トルクが力強く、静粛性にも優れています。後席やラゲッジスペースも十分広く、家族使いにも向いています。コストを抑えつつ実用性を求める方にぴったりです。
6-2. 日産 キックス
キックスは、e-POWER専用車として電動ならではのスムーズな加速が心地よい一台です。乗り心地とハンドリングのバランスが良く、静粛性も高めです。価格はヤリスクロスのハイブリッドと同程度ですが、電動ならではの魅力を感じたい方にはぜひ試乗をおすすめします。
プジョー 2008
2008は、個性や質感の高さを重視する方におすすめです。内外装のデザインは上質で、3気筒エンジンでも力強く、走りも楽しいです。価格は高めですが、満足度の高いSUVを求める方には非常に魅力的です。
まとめと筆者の一言
ヤリスクロスは、平均点以上の総合力を持つコンパクトSUVです。万人向けに作られていて、特に運転初心者やセカンドカーとしては理想的です。しかし、走りや静粛性にこだわりが強い方には、物足りなく感じるかもしれません。ハイブリッドのFFモデルならより快適な選択になるでしょう。
他のライバル車もそれぞれに特徴がありますので、必ず試乗して比べてみてください。大切なのは、自分が「何を重視したいか」を明確にすることです。試乗を重ねることで、自分に合った1台がきっと見つかります。
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