レクサス初のEV専用モデル「RZ」が、発売から時間が経つにもかかわらず思うように売れていない…そんな声がネット上で増えています。EV市場が拡大する中、なぜレクサスRZは苦戦を強いられているのでしょうか?
本記事では、2024年時点の販売データや値下げ戦略、ライバル車との比較から、その背景にある本質的な課題を探ります。また、トヨタbZ4Xとの構造的な共通点や、航続距離の限界、レクサスブランドとしての立ち位置まで、多角的に検証。さらに、投入されたRZ300eの狙いや2026年以降の新戦略についても詳しく解説します。レクサスRZは本当に「失敗作」なのか?その真実に迫ります。
なぜ「レクサスRZ 売れてない」と検索されるのか?
出典:LEXUS
EV市場が急成長する中での苦戦
近年、世界的に電気自動車(EV)市場は急速に拡大しています。特に北米市場では、テスラを筆頭に多くのメーカーが次々と魅力的なEVモデルを投入し、競争が激化しています。そんな中で、レクサス初の専用EVである「RZ」は、注目を集めながらもなかなか販売が伸びず、「売れてない」との評価が広まりつつあります。
その背景には、他社のEVが次世代のテクノロジーやデザイン、そして航続距離や充電性能で高いレベルを示している中、RZがそこまでの差別化や技術的優位性を示せていないことが挙げられます。RZはトヨタのbZ4Xと同じ「e-TNGA」プラットフォームを採用しているものの、レクサスという高級ブランドを冠している以上、より明確な「プレミアム感」や「付加価値」が求められます。しかし、EVユーザーの期待する基準には十分に応えきれていないのが現状のようです。
また、EV市場そのものが進化しており、ただEVであれば売れるという時代は終わりつつあります。ユーザーは価格性能比、実用性、アフターサポート、充電環境といった総合的な視点でクルマを選ぶようになっており、そこにRZは十分な魅力を提供できていないという見方もあります。
販売台数の実態:2024年9月時点の数字が示す需要の低迷
数字で見ると、レクサスRZの厳しい現状は一目瞭然です。2024年9月時点での累計販売台数は8,381台となっていますが、9月単月で見るとわずか523台しか売れていません。この販売ペースでは、レクサスブランドとしても想定を大きく下回っていると考えられます。
特に注目すべきは、値下げやグレード追加など販売テコ入れ策が講じられたにもかかわらず、販売台数が大きく伸びていない点です。2024年にRZ 300eの導入、2025年モデルでさらなる廉価グレードの追加や価格改定が行われたにもかかわらず、数字にはっきりとした反映が見られないのは、ユーザーが依然として購買をためらっている証拠でもあります。
EV市場が競争激化する中、レクサスRZは「売れないEV」のひとつとして認識され始めており、「なぜ売れないのか」を検索するユーザーが増えているのは、まさにこの現状に対する不信感や関心の表れといえるでしょう。
値下げの嵐、それでも売れないワケ
出典:LEXUS
最大100万円超の価格引き下げ、その背景
レクサスRZは、2025年モデルにおいて大幅な価格見直しが行われました。具体的には、RZ 300e Premium FWDの価格が55,175ドルから48,175ドルへ、RZ 450e Luxury AWDは65,605ドルから58,605ドルへと、最大で7,000ドル(日本円換算で約100万円)以上の値下げが実施されました。さらに、新たに設定された廉価グレード「RZ 300e FWD」では43,975ドルからスタートし、これはトヨタbZ4XのXLEグレード(44,465ドル)よりも安い価格設定です。
こうした値下げの背景には、北米市場での販売不振をなんとか打開したいという意図が見え隠れします。加えて、レクサス初のEVとして高価格帯に設定されていたモデルに対して、市場が価格に見合う価値を感じていないという実情が浮き彫りになったともいえるでしょう。値下げによって「お買い得感」を演出し、EV市場での存在感を取り戻したいという思惑があるのです。
しかし、このような大幅値下げは、逆に「値崩れするクルマ」という印象を与えかねません。高級ブランドとしてのイメージが損なわれ、リセールバリューへの懸念が強まるなど、副作用も無視できません。
トヨタbZ4Xより安くなっても選ばれない現実
驚くべきことに、レクサスRZはトヨタbZ4Xよりも安価に購入できる車種となってしまいました。これは本来、プレミアムブランドであるレクサスとしては非常に異例な事態です。内外装の質感や静粛性、快適性といった面では確かにレクサスらしさがあるものの、RZとbZ4Xが同じe-TNGAプラットフォームを共有しており、駆動方式やモーター出力も大きな違いがないことから、「だったらトヨタで十分」と考える消費者も少なくないでしょう。
特に価格に敏感なEVユーザー層にとっては、「性能が同じで価格が高い」というのは致命的なマイナス材料です。また、EVの命ともいえる航続距離についても、他社の最新EVと比べて目立った優位性がないRZに対しては、たとえ価格が下がっても選ばれる理由が見当たらないという声もあります。
このように、価格競争でbZ4Xより下に位置づけたにもかかわらず販売に結びついていないのは、根本的な商品力やブランドポジションの見直しが求められている証拠といえるでしょう。
航続距離の問題:他EVとの比較で見える弱点
出典:LEXUS
RZ450eの航続距離は約450km、本当に十分か?
レクサスRZ450eの公表された航続距離はおおよそ450kmです。一見すると十分に思える数値ではありますが、実際のユーザー利用においてはこの数値に対する不満の声が少なくありません。特にEVは、バッテリーの性能が外気温や運転スタイルによって大きく左右されるため、「カタログ値=実航続距離」にはなりづらいという課題があります。
また、450kmという数値は、市場にある他のEVと比べると特別長いわけではありません。たとえば、同クラスである日産アリアやテスラのモデルYは、500kmを超える航続距離を実現しているモデルも多く、長距離移動を前提としたドライバーからすれば、RZの航続距離では物足りなさを感じる場面が多いかもしれません。
さらに、EVにおいては「充電インフラの未整備」という社会的な課題も残されており、航続距離が長いほど安心感が増すという側面もあります。こうした事情を考慮すると、RZ450eの航続性能は「レクサス」というブランドの期待値に応えるにはやや弱い部分といえるでしょう。
競合記事でも触れられている通り、レクサスは北米市場でRZの販売不振に対応するかたちで価格を引き下げてきましたが、ユーザーが重視するポイントの一つである「実用的な航続距離」に根本的な改善が見られないままでは、値下げだけでは購買意欲を引き上げるには限界があるのかもしれません。
ライバル車種(アリア、テスラ等)との比較
レクサスRZ450eの直接的なライバルとされる車種には、日産アリアやテスラのモデルYなどが挙げられます。これらのモデルはそれぞれのブランドでEV戦略を牽引する主力車種であり、技術面やブランド力の両面で高く評価されています。
たとえば日産アリアは、最大610km(WLTCモード)という非常に長い航続距離を誇り、デザイン性や静粛性といった面でも高い支持を得ています。テスラのモデルYは、ハードウェアとソフトウェアが高次元で融合されたバランス型EVとして知られており、航続距離はグレードによって異なるものの、最大533km(EPA値)を実現しています。
これらと比較すると、RZ450eの航続距離450kmは見劣りしてしまいます。また、テスラのように独自の充電ネットワークを持っていない点も不利に働きますし、OTA(Over The Air)によるソフトウェア更新といった機能面でもライバル車に後れを取っている印象は否めません。
さらに、アリアやモデルYは価格帯やグレード構成が多様で、幅広いユーザー層にアプローチできる柔軟性があります。一方でRZは「プレミアムEV」として位置付けられていながらも、航続距離や技術的な独自性で強みを打ち出せていないため、価格競争で劣勢に立たされることになってしまっているのです。
EV戦略とプラットフォームの限界
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e-TNGAプラットフォームの評価と課題
レクサスRZは、トヨタと共同で開発された「e-TNGA」プラットフォームを採用しています。このプラットフォームは、トヨタ初のEV専用設計とされてはいるものの、実際にはガソリン車やハイブリッド車と共用される「柔軟性」を優先した設計になっているため、専用EV向けに最適化された他社のプラットフォームと比較するとやや限界があることも事実です。
たとえばテスラのEVは、バッテリーパックをシャシー構造の一部として活用する「スケートボード型」設計を採用しており、重量配分や走行性能、居住空間の確保などにおいて極めて優れた効率性を発揮しています。一方、e-TNGAは既存の車両アーキテクチャとの共通化を優先したことで、EV専用としての設計の自由度が抑えられてしまい、結果として航続距離や充電性能、室内スペースなどの面でやや不利な構造となってしまいました。
競合記事でも言及されているように、RZが「売れない」とされている背景には、このプラットフォームの限界も少なからず影響していると考えられます。現在のEV市場では、プラットフォームそのものが商品価値に直結する時代に突入しており、レクサスRZの「設計思想」が市場の要求水準に追いついていないことは否めません。
レクサスRZとbZ4Xの「同じクルマ」問題
もう一つ、RZが市場で苦戦する大きな要因として、「トヨタbZ4Xと中身がほぼ同じである」という点が挙げられます。RZとbZ4Xはどちらもe-TNGAプラットフォームをベースに開発されており、搭載されるモーターの出力や駆動方式など、基本的なパワートレイン構成も共通しています。
このように中身がほぼ同じであるにもかかわらず、レクサスRZの価格はbZ4Xよりも高く設定されていた時期がありました。現在ではRZの価格が下がり、エントリーグレードではbZ4Xを下回る設定となったものの、「同じなら安いトヨタでいい」と考える消費者が一定数いるのは事実です。
ブランド価値だけで価格差を正当化するのは、非常に難しい時代になっています。特にEV市場では、性能や航続距離といった「数字」が重視される傾向が強く、同じパフォーマンスであれば少しでも安価な方が選ばれる傾向が顕著です。
つまり、RZは「プレミアムEV」としての存在感を打ち出すための独自性が不足しており、bZ4Xと明確に差別化できていない点が、販売面で大きな障壁となってしまっているのです。
プレミアムブランドとしての立ち位置が曖昧に
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高級感はあるが価格に見合う価値は?
レクサスというブランドは、トヨタのプレミアムラインとして確固たる地位を築いてきました。静粛性や快適性、内外装の質感といった面では多くのユーザーから高評価を得ており、RZにもそのDNAはしっかりと受け継がれています。しかしながら、レクサスRZが市場で苦戦している背景には、「高級感はあっても価格に見合うだけの価値を感じにくい」という消費者の声が存在します。
たとえば、RZ 450e Luxury AWDは、2024年モデルでは65,605ドルという価格で販売されていました。これは同じプラットフォームを用いるトヨタbZ4XのXLEグレード(44,465ドル)と比較すると、2万ドル以上の価格差があったことになります。この価格差に対し、消費者が見出せる「違い」が内装の質感や乗り心地だけでは弱く、航続距離や充電性能といったEVにとって重要な要素でアドバンテージを取れていない点が大きな課題です。
もちろん、プレミアムブランドとしての価値を訴求することは重要ですが、それが「価格にふさわしい」と思わせるだけの納得感を伴わなければ、価格競争の中では選ばれにくくなってしまいます。とくにEV市場では、消費者の選定基準がよりシビアになっており、ブランド名だけでは勝負できない時代に入っていることが、レクサスRZの販売低迷にも表れています。
内外装・快適性の評価は高いが…
レクサスRZの内外装や走行中の快適性については、一定の評価を得ています。インテリアには上質な素材が使用され、操作パネルやインフォテインメントシステムの配置なども洗練されており、運転中の満足感は高いとのレビューも多く見られます。また、ロードノイズの少なさやサスペンションのチューニングも、さすがはレクサスといえる静粛性・乗り心地を実現しています。
ただし、こうした特徴は確かに「レクサスらしい」魅力ではあるものの、EV市場において最重要視される「航続距離」「充電性能」「価格対性能比」などと比べると、購入の決定打にはなりにくい側面があります。特にEVとしての魅力が期待される中で、他車と同等の航続距離、あるいはそれ以下であれば、たとえ快適性に優れていても購入をためらう方が多いのが実情です。
競合記事でも述べられているように、RZの「プレミアム感」は確かに存在するものの、それが消費者の心を動かす決定的な要素になっていないという点が問題です。「価格の高さ」と「見合った価値」のバランスがずれている印象を与えてしまっていることで、プレミアムブランドとしての立ち位置が曖昧になっているといえるでしょう。
今後の展望とテコ入れ策
出典:LEXUS
シングルモーター仕様(RZ300e)投入の意図
レクサスは販売不振を受けて、価格の見直しと並行してRZのラインアップを拡充しています。その中で特に注目されているのが、より安価なシングルモーター仕様「RZ300e」の導入です。RZ 300e FWDは、2025年モデルで新たに登場し、価格は43,975ドルからと、トヨタbZ4XのXLEグレードよりも安く設定されました。
このモデルの投入には明確な意図があります。高価格帯のRZ 450eが市場で苦戦している中、より購入のハードルを下げることで裾野を広げたいという戦略です。特に、初めてEVに乗るユーザーや、レクサスブランドに興味を持ちながらも価格がネックで購入を見送っていた層に対して、新たな選択肢を提供する狙いがあります。
また、パワートレインをシンプルにすることで、軽量化やコストダウンが可能となり、結果として効率や航続距離の面でもプラスに働く可能性があります。実際、価格の割に装備も十分で、「お買い得感」を打ち出すモデルとしての位置づけが期待されています。
とはいえ、これだけでRZの販売全体が大きく回復するかは未知数です。消費者は依然として「EVとしての実力」や「ブランド価値とのバランス」を厳しく見ており、単なる価格引き下げだけでは不十分という評価が根強いのも現実です。
2026年以降の新戦略とプラットフォーム刷新への期待
競合記事でも言及されているように、レクサス(およびトヨタ)は今後のEV戦略において抜本的な見直しを進める方針を掲げています。その中でも、2026年以降に投入が予定されている「新世代プラットフォーム」には大きな期待が寄せられています。これは、現行のe-TNGAでは対応しきれなかった航続距離や電動化効率、車両設計の自由度といった課題を根本から解決するための刷新となる見込みです。
新プラットフォームでは、ソフトウェアとハードウェアの統合性をさらに高め、より競争力のあるEVを開発することが目的とされています。これにより、テスラや中国EV勢といった強力なライバルに対して、レクサスブランドらしい独自性と高級感、そしてEVとしての先進性を持ち合わせたモデルの開発が可能になると期待されています。
RZはあくまで第一世代のEVとしての試金石であり、本命は次期プラットフォームを搭載した第二世代以降のモデルにあるといえるでしょう。今後レクサスがどのようにEV市場での巻き返しを図っていくのか、その動向からは目が離せません。
結論:レクサスRZは復活できるのか?
出典:LEXUS
値下げ・商品改良だけでは足りない理由
レクサスRZは、2025年モデルで大幅な価格見直しを実施し、最大で100万円超の値下げを断行しました。新たに投入されたRZ 300e FWDでは、価格が43,975ドルからスタートし、トヨタbZ4XのXLEグレード(44,465ドル)よりも安い設定となったことは話題を呼びました。しかし、こうした価格調整が行われたにもかかわらず、販売台数は依然として伸び悩んでおり、2024年9月の月間販売台数はたったの523台にとどまっています。
なぜここまで大幅な値下げをしても消費者の反応が鈍いのでしょうか? その理由は単純で、現在のEV市場においては「価格の安さ」だけで勝負できる時代ではないからです。消費者はEVに対して、航続距離や充電性能、ソフトウェアアップデート対応、ブランドのEV技術力といった複数の指標を重視しています。特にレクサスのようなプレミアムブランドでは、「価格に見合った革新性」や「プレミアムならではの体験」が求められます。
加えて、レクサスRZがトヨタbZ4Xと同じe-TNGAプラットフォームを使い、基本構造やパワートレインが類似していることも「差別化」において不利に働いています。「中身がほぼ同じなら、わざわざレクサスでなくても…」という冷静な消費者心理に、価格だけで対抗するのは非常に難しいのが現実です。
つまり、RZが復活するためには、値下げや小手先の商品改良では不十分で、EVとしての核となる性能やブランドとしての訴求軸そのものを再構築する必要があるということです。
EV市場でのレクサスの再起戦略とは
レクサスがRZを通じて経験した販売不振は、単なる一車種の問題にとどまりません。それは、レクサスというブランドがEV市場においてどのような立ち位置を築くのか、という大きな問いへの試金石でもあります。
現在、レクサスはトヨタと共に2026年を目標に新世代のEV専用プラットフォームを開発中とされています。このプラットフォームは現行のe-TNGAに代わるものであり、より長い航続距離、高効率な電動パワートレイン、そしてOTA(Over The Air)アップデートによる柔軟なソフトウェア対応など、EVに求められる最新技術を包括的に搭載する予定です。
この新プラットフォームの投入によって、レクサスはRZに続く第二世代のEVで本格的な「プレミアムEVブランド」として再出発を図ることになります。そこでは、単なる高級感ではなく、EVとしての革新性や走行性能、そしてデジタル技術との融合が問われるでしょう。
また、商品力の強化に加えて、販売戦略やユーザー体験の提供にも一層の工夫が求められます。EVならではの購入支援サービスやサブスクリプションモデル、急速充電インフラの整備といったエコシステムの構築が進めば、消費者の安心感や満足度も高まります。
つまり、RZの失敗を踏まえた上で、レクサスがどれだけ「EV時代のラグジュアリーブランド」として再定義できるかが、今後の成否を分けるカギとなります。RZ単体では難しくとも、新しい戦略と技術基盤のもとで、再び存在感を発揮するチャンスは十分にあるのです。
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