「世界では絶好調なのに、なぜBYDは日本で売れないのか？」
そんな疑問を抱いていませんか？日本市場で苦戦する背景には、ブランド信頼性の低さや充電インフラの未整備、さらには中国製EVへの根強い抵抗感など、さまざまな要因が絡んでいます。
本記事では、BYDの販売実績データや購入者層、消費者が抱く不安、さらに今後の成長可能性や日本撤退の可能性についても詳しく解説します。
読み終わるころには、BYDが日本市場で生き残れるかどうか、はっきりとイメージできるはずです。
なぜ「BYD 売れない」と言われるのか？
出典：BYD
日本市場で苦戦する最大の理由とは？
中国の電気自動車メーカー「BYD」は、世界的にはEV市場で急速にシェアを拡大している一方、日本市場では苦戦しています。その最大の理由は、日本の自動車市場の特殊な構造にあります。
まず、日本国内ではトヨタ、日産、ホンダといった老舗国産メーカーが圧倒的な信頼とブランド力を築いています。これらの企業は、長年にわたり耐久性の高い車両や優れたアフターサービスを提供してきたため、消費者の間に「日本車こそ安心」という価値観が強く根付いているのです。
また、日本ではハイブリッド車（HV）が圧倒的に普及しており、EV（電気自動車）そのものへの関心がまだ限定的という背景もあります。加えて、充電インフラが都市部以外ではまだ不十分で、地方ではEVを利用しづらい環境が続いています。これらの要因が重なり、BYDのような新興EVメーカーが日本市場で浸透するのは非常にハードルが高いのが現実です。
ブランド信頼性が低いという致命的ハンデ
もうひとつ大きな障壁が、BYDというブランドに対する信頼性の問題です。
日本の消費者は、特に自動車のような高額商品に対して「ブランド信頼性」を非常に重視します。トヨタやホンダといった日本メーカーはもちろん、輸入車でもメルセデス・ベンツやBMWのような長年実績を重ねたブランドが高く評価されてきました。
一方、BYDは中国では非常に有名で、世界的な販売台数もトップクラスですが、日本国内では知名度が低く、「中国製」というイメージに対して警戒心を持つ人がまだまだ多いです。特に、過去に一部の中国製品で品質問題が取り沙汰された影響もあり、「安いけれど大丈夫なのか？」という不安が根強く残っています。
さらに、現時点では全国に十分なディーラー網やアフターサービス体制が整っていないため、故障やトラブル発生時に迅速な対応が受けられるのか心配する声も少なくありません。これらの点が、BYDが日本市場で「売れない」と言われる大きな理由となっています。
実際、BYDは日本でどれくらい売れているのか？
出典：BYD
販売台数データと他メーカー比較（例：2023年1,446台、ヒョンデより上）
では、実際にBYDの日本国内での販売実績はどの程度なのでしょうか？
2023年のデータによると、BYDは日本で1,446台の車両を販売しました。この数字は、韓国メーカーであるヒョンデ（489台）を大きく上回っており、輸入車ブランドの中では17位にランクインしています。
販売拠点の拡大や、日本市場に合わせた戦略的なモデル投入（たとえば「ATTO 3」や「DOLPHIN」）が功を奏し、一定の成果を出していることがわかります。
しかし、国内メーカーであるトヨタやホンダと比較すると、その差は歴然です。トヨタの新車販売台数は年間100万台を優に超えますので、BYDの1,400台強という数字はまだ「スタートラインに立ったばかり」と言えるでしょう。
また、日本のEV市場全体もまだ成熟しておらず、消費者の多くがハイブリッド車に満足しているため、EVそのものの需要が伸び悩んでいる点も、BYDの成長スピードに影響しています。
購入者層は誰？（在日中国人、コスパ重視層、環境意識層）
BYDを日本で購入しているのは、どのような人たちなのでしょうか？
主な購入者層は、以下のように分類できます。
まず一番目立つのは、在日中国人コミュニティです。中国本国ではBYDは非常に高い評価を受けているため、日本に住む中国人にとっては親しみや信頼感があり、購入のハードルが低いのです。
次に、コストパフォーマンスを重視する層もBYDを選んでいます。日本でEVを購入しようとすると、テスラや日産リーフといった選択肢がありますが、価格帯が高めです。その点、BYDの車はリーズナブルな価格で手に入るため、「EVに乗りたいけど高級車は無理」という消費者にとって魅力的な選択肢となっています。
さらに、環境意識の高い層も見逃せません。近年、日本でもSDGsへの関心が高まり、環境負荷の少ない生活を目指す人が増えています。EVはその流れに乗るツールのひとつであり、特にBYDは低価格でEVデビューできるため、環境志向の若者や企業にとっても検討対象となっています。
このように、現時点ではニッチな市場を中心に支持を集めているBYDですが、今後認知度や信頼性が向上すれば、さらに幅広い層へと拡大していく可能性も秘めています。
消費者が抱くBYDへの主な不安とは？
出典：BYD
故障率・耐久性への懸念（異音・ソフトウェア不具合など）
BYDの車に対して、多くの消費者が抱いている不安の一つが「故障率」や「耐久性」に関するものです。
競合記事でも触れられているように、BYDはバッテリーからモーター、インバーターに至るまで自社生産しており、一貫した品質管理体制を整えています。特にブレードバッテリーは高い耐久性と安全性を誇り、発火リスクも従来型バッテリーに比べて低いとされています。
しかし、実際に日本の消費者の声を拾っていくと、「異音がする」「ソフトウェアの不具合が起こる」「充電時にトラブルが発生した」といった報告がちらほら見受けられるのも事実です。EVという新しい技術を搭載している以上、ソフトウェアのトラブルはある程度仕方ない部分もありますが、特に日本では「車は長く乗るもの」という意識が強いため、小さな不具合であってもネガティブな印象につながりやすいのです。
また、日本市場での販売台数がまだ少ないため、統計的に信頼できる故障率データが出揃っていないことも、不安を増幅させる要因になっています。安心して長期間使えるかどうか、まだ判断材料が足りないのが現状と言えるでしょう。
安全性の評価（Euro NCAP5つ星のモデル紹介）
一方で、BYDの安全性については高い評価も得ています。
たとえば、欧州の安全評価機関であるEuro NCAPによる2022年のテストでは、「BYD ATTO 3（日本名：アット3）」が最高評価の5つ星を獲得しました。このテストは、前面衝突・側面衝突・歩行者保護・運転支援システムの有効性など、多角的に安全性を評価するものです。
特にATTO 3は、成人乗員保護性能において非常に高いスコアを記録しており、安全性の高さが証明されています。さらに、BYD独自の「ブレードバッテリー」は発火リスクが極めて低く、従来型バッテリーに比べて耐久性と安全性が優れていると評価されています。
また、運転支援システム（ADAS）も標準装備されており、自動緊急ブレーキ（AEB）や車線逸脱警報（LDW）、ブラインドスポットモニター（BSM）など、先進機能が充実しています。ただし、細かい部分では「高速道路走行時のADAS精度にバラつきがある」といった指摘もあり、日本市場に合った更なるローカライズが求められるでしょう。
アフターサービス不足問題（販売拠点や修理体制）
BYDに対する不安の中で、もっとも根深いもののひとつが「アフターサービス不足」です。
現時点でBYDジャパンは販売拠点の拡大に力を入れており、2025年までに全国100店舗体制を目指していると発表しています。しかし、まだその途上にあるため、特に地方では「近くにディーラーがない」「修理や点検をどこに頼めばいいのかわからない」といった不安を抱える人が多いのが実情です。
さらに、故障時の迅速な対応や、リコールなど万一の際のサポート体制についても、トヨタやホンダと比べるとどうしても見劣りしてしまいます。日本の消費者は、車を購入する際に「安心してアフターケアを受けられるか」を非常に重視する傾向が強く、販売後の体制整備が遅れていることが、BYDの購入をためらわせる大きな要因となっています。
今後、拠点数の増加とともにアフターサービスの質が向上すれば、この不安も徐々に払拭されていくでしょうが、現時点では課題が残る状況です。
「BYDやめとけ」と言われる理由を徹底解説
出典：BYD
購入後のサポート体制に不安あり
「BYDやめとけ」という声が一定数存在する背景には、購入後のサポート体制への不安が大きく関係しています。
先述の通り、BYDジャパンは2023年から本格的に日本市場への展開を進めていますが、トヨタや日産のように全国規模でのディーラー網やサービスネットワークが整備されているわけではありません。これにより、万が一故障やトラブルが発生した際に「対応してくれる店舗が遠い」「修理に時間がかかる」といったリスクが現実的に存在しています。
また、まだ実績が少ないため、「長期的な部品供給やリコール対応は本当に大丈夫か？」といった不安も拭いきれません。車は数年、十数年と付き合っていく買い物ですから、「買った後が心配」という心理が働くのも当然でしょう。
加えて、BYDの車はソフトウェアによる制御が多い分、アップデートやサポートが不可欠ですが、その体制が国産メーカーと同等レベルにあるかというと、現状ではまだ十分とは言えない部分もあります。こうした理由から、「BYDはやめておいたほうがいい」という慎重な意見が一定数存在しているのです。
今後、拠点数拡大や日本市場向けサポート体制の充実によって、これらの不安をどれだけ払拭できるかが、BYDの日本市場での成否を左右すると言えるでしょう。
充電インフラの未整備と地方での使いづらさ
BYDが日本市場で本格展開を進める中で、大きな障害となっているのが「充電インフラの未整備」という問題です。
日本全国には急速充電器や普通充電器が設置されてはいるものの、特に地方部ではその数が圧倒的に不足しています。都市部ではショッピングモールや公共施設にEV充電スポットが増えつつありますが、地方に目を向けると、数十キロ走らないと次の充電スポットが見つからないという状況も珍しくありません。
BYDの車は、たとえば「ATTO 3」であれば航続距離約470km（WLTCモード）と比較的優秀ですが、それでも長距離移動が多い日本の地方では「バッテリー切れ」の不安が常につきまといます。ガソリン車のようにどこでも気軽に燃料補給できるインフラが整っていない以上、地方在住の人たちにとって、EVに乗るハードルは非常に高いのが現実です。
さらに、充電にかかる時間も問題です。急速充電でも30分以上、普通充電では数時間を要するため、「ちょっとした移動にすぐ使いたい」というニーズには応えにくい部分もあります。この点はBYDに限らず、EV全体の課題ですが、特に後発ブランドであるBYDにとっては、ユーザーの不満を吸収しきれないリスクが高くなります。
中国製EVへの根強い抵抗感
日本市場でBYDが売れづらい大きな理由の一つに、「中国製EVに対する根強い抵抗感」があります。
たしかに、BYDは世界的に見れば2022年にテスラを抜いて世界トップのEVメーカーとなるなど、飛躍的な成長を遂げています。しかし、日本の消費者心理においては、依然として「中国製品＝品質に不安がある」というイメージが根強く残っています。
特に自動車のような高額かつ命を預ける製品では、少しの不安でも購買意欲を大きく削ぐ要因になります。過去の中国製品に関する品質トラブルが報じられた影響もあり、「安いけど信頼できるのか？」「本当に安全なのか？」と疑問を抱く消費者は少なくありません。
さらに、SNSや口コミサイトでも、BYDに関するネガティブな噂や、実際に経験したトラブル報告が拡散されることで、不安がより広がりやすい状況になっています。
こうした抵抗感は、一朝一夕で解消できるものではありません。
BYDが日本市場で本格的に信頼を勝ち取るためには、時間をかけて実績を積み重ね、実際に乗ったユーザーからポジティブな声を増やしていく必要があるでしょう。
今後BYDが成長する可能性はあるのか？
出典：BYD
価格競争力を武器にシェア拡大できるか？
とはいえ、BYDにも大きなチャンスが存在します。その最大の武器が「価格競争力」です。
たとえば、日本市場で展開している「BYD ATTO 3」は税込440万円前後と、同クラスの輸入EVや国産EVと比べてもかなり価格が抑えられています。さらに、国のEV購入補助金（最大85万円）を適用すると、実質価格は350万円台にまで下がり、ガソリン車のミドルクラスSUVと同等か、場合によってはそれより安くなるケースもあります。
競合車である日産アリアやトヨタbZ4Xなどは、補助金適用後でも400〜500万円台になることが多く、価格面での優位性は明らかです。
この「手が届きやすい価格帯」という強みを活かし、「高級志向ではないが、エコ意識の高いファミリー層」「コスパ重視の若年層」をターゲットに広く訴求できれば、日本市場でのシェア拡大は十分に狙えます。
特に、都市部の若年層を中心にEVに対する抵抗感が薄れつつあり、カーシェアリングやサブスクリプションサービスを活用する層が増えていることを考えると、BYDの手ごろなEVは時代のニーズに合っているとも言えるでしょう。
ブランド認知・信頼性向上に向けた戦略
価格競争力だけでなく、今後のカギを握るのは「ブランド認知」と「信頼性の向上」です。
BYDジャパンは、2025年までに販売拠点を全国100店舗に増やす計画を発表しており、これによってサービス体制を強化し、安心感を提供することを目指しています。
また、TVCMやSNS広告を通じた積極的なマーケティング施策も展開しており、「BYD」というブランド名を日本の一般消費者に浸透させようとしています。
特に、実際に購入したユーザーの満足度を高め、ポジティブな口コミを増やすことが、今後の成長には欠かせません。
安全性の高さ（例：ATTO 3のEuro NCAP5つ星取得）や、ブレードバッテリーによる高い耐久性と安全性をしっかりアピールし、「安いだけではない」「安心して乗れるEV」というイメージを築いていくことが必要です。
ブランドの信頼性は、一夜にして確立できるものではありません。
地道に実績を積み重ね、ユーザーに安心して選ばれる存在へと成長できるかが、BYDが日本市場で長期的に成功するためのポイントになるでしょう。
日本撤退の可能性は？（現状撤退予定なし）
現在、BYDが日本市場から撤退する予定はありません。
むしろ、BYDジャパンは日本市場を非常に重視しており、今後も積極的な展開を続ける方針を明確にしています。たとえば、2025年までに日本国内での販売拠点を100店舗以上に増やすという目標を掲げており、これは短期的なビジネスではなく、長期的な市場開拓を見据えた動きであることがわかります。
また、BYDはすでに日本国内で「ATTO 3」「DOLPHIN」など複数の車種を導入しており、さらに新モデルの投入も予定しています。こうした新車攻勢は、「撤退どころか、むしろ本格参入を加速している」と言えるでしょう。
さらに、2023年の販売実績では1,446台を記録し、韓国ヒョンデの489台を大きく上回る成果を上げています。もちろん、トヨタやホンダなど国内大手と比べればまだ微々たる数字ではありますが、初期フェーズとしてはまずまずのスタートと言えます。
ただし、日本市場での成功には多くの課題も残されています。消費者のブランド信頼性の問題、アフターサービス網の整備、充電インフラの拡充など、クリアすべき壁は決して低くありません。これらの問題にしっかり対応できなければ、長期的には厳しい状況に追い込まれる可能性も否定できないでしょう。
しかし、現時点でBYDが「日本市場から撤退する」という具体的な動きや報道は一切なく、むしろ「これから本腰を入れる」という意志のほうが明確に伝わってきます。
まとめ：BYDは今後日本市場で生き残れるか？
出典：BYD
BYDが日本市場で「売れない」と言われている背景には、日本特有の自動車文化と消費者心理が大きく関わっています。
トヨタやホンダといった国産メーカーへの強い信頼感、中国製品に対する根強い不安、地方における充電インフラの未整備、そしてEV市場自体の未成熟といった複合的な要素が、BYDの成長を阻んでいるのが現状です。
しかし一方で、BYDには「価格競争力」という大きな武器があります。実際、ATTO 3やDOLPHINといったモデルは、補助金を活用すれば非常に手の届きやすい価格帯であり、都市部を中心に一定のニーズをつかみつつあります。また、安全性に関してもEuro NCAPで5つ星を獲得するなど、客観的な評価を受けており、「安かろう悪かろう」というイメージを覆すポテンシャルを秘めています。
さらに、販売拠点の拡大や、日本市場向けのマーケティング戦略にも力を入れており、時間をかけて地道にブランド信頼を築いていこうとする姿勢が見えます。もちろん、日本の消費者は慎重なため、すぐにトヨタや日産と肩を並べるのは難しいでしょう。ですが、特定のターゲット層（コストパフォーマンス重視層や環境意識の高い層）を着実に取り込めれば、BYDは日本市場において「選ばれる存在」へと成長する可能性を十分に持っています。
今後は、実際に車を購入したユーザーからの満足度向上、アフターサービスの充実、そしてさらなる充電インフラの普及にどう対応していくかがカギになるでしょう。BYDがこれらの課題に誠実に向き合い、一歩一歩信頼を積み重ねていけば、日本市場で確かな地位を築く未来も、決して夢ではないはずです。
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